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2004年08月17日

小川の敗戦とPRIDE GP

 小川が意外なほどにあっさりヒョードルに負けてしまった。ヒョードルのパンチの攻勢は予想できたが、それをかいくぐった小川がバックに組み付いたのをくるりと反転して、あっさりマウントを奪ってしまったのには驚いた。あの瞬間が事実上の勝負の分かれ目だっただろう。

 ぼくのなかでは、船木×ヒクソン戦が思い出された。船木を相撲のはたき込みのような形で転がし、それと同時にマウントを取っていたヒクソンの非凡さ。勝敗が決したのはそのあとだったが、あの一瞬の動きは素晴らしかった。ヒョードルにヒクソンの姿がだぶってしまった。

 ヒョードルの強さは、GPの1、2回戦を見ても、ちょっと神憑かり的なものがあったが、多くの人が「これほどまでとは」と思ったかもしれない。
 しかしそのヒョードルと決勝で対戦したノゲイラも、彼のパウンドをかなりうまくいなせていた。あのまま試合が続いた場合、両者に決め手がないまま、観客にとってはフラストレーションの少々たまる内容で、判定決着になったかもしれない。
 ただ、ヒョードルのバッティングは、その気になれば予想できた気がする。彼はリングスのKOKでも同じような結末があった(VS高坂戦)。あの決勝の状況を見て思い浮かんだのは、その時の情景だった。

 小川にはかなり気の毒な結果になってしまったが、彼の評価はあまりに短すぎた試合のためにまだ完全には定まらないのではないか。
 小川が弱かったというより、ヒョードルが強すぎたと言ったほうが正しい気がする。ただ彼の実力が総合ではトップのトップでなかったことは、悲しいけれど判明してしまった。悲しいけどといったのは、やはり彼の未知の実力に自分も幻想を抱いていた部分があったからだ。
 1、2回戦では気にならなかったが、ヒョードルと打撃で対峙してしまうと、腰の高さがやけに目立った。この腰の差で勝敗があったような気もする。彼は今後どうするのだろう?

 ぼくは小川がヒョードルをずっと押さえ込んで判定勝ちし、ハリトーノフがノゲイラに打撃で勝って、決勝ではアクシデント含みで小川がハリに破れるという、いま思うとかなりプロレスチックな予想を立てていた。
 これはぼくの資質にも関わってくるが、だいたいにおいてこうした予想などする場合、まず最初に情が働いてしまうので冷徹に予想ができない。
 たださすがにいつも同じパターンを繰り返しているので、今度予想するときはもう少し堅実というか、ヘンな話真面目にやってみようか?? でもそれでは「面白くない」と思ってしまうんだなあ。

 ハリトーノフを推していたのは、彼がロシアントップチームの所属だったことも個人的には大きい。
 要するにこれも情の論理なのだが、ぼくはリングスが好きだったので、ロシアントップ=リングスロシア勢をついつい贔屓してしまったわけだ。
 現実を見ると、ハリトーノフは相当にいい選手であることに変わりはないが、ノゲイラと比べたらやや見劣りすることがわかった。

 この差が今後埋まるかどうかはよくわからない。ヒョードルの強さはロシア人であるという以前に天性のものがかなり加味されている。
 ハリトーノフがPRIDEで経験を積んでも、もしかしたら縮まらない差なのかもしれない。現時点ではそんな感想。覆されたら嬉しい気もするが。

 近藤は結果は完敗だったが、ラストのパンチが当たる寸前までは互角の内容だったと思う。ただほんのわずかなスキの部分を突かれ、小穴が一気にこじ開けられて、完膚なきまでやられてしまった。
 しかしぼくはある意味仕方ないと思っている。なぜならシウバは勝つために努力をし、勝つことに執念を燃やし、いわばそれがすべてと思っている典型的なブラジリアンファイター。

 逆にいえば、日本にはそんな凄まじい意識の選手はいない。これを嘆く人もいるのかもしれないが、日本人の感覚は勝つこと以外にもっと様々なことを考え、追求し、鍛練している。
 特に近藤はその典型だ。不動心を口にし、意識の中で勝敗以上の道を求める意識がある以上、ギリギリの勝負を分ける瞬間で差が出たとしても致し方ない(この話は、オリンピックのところでも書いた気がするな……)。

 というより、日本人が勝てないのはハングリー精神に欠けているからでは必ずしもないということだ。
 相手のハングリーさを凌駕するほどの技芸をモノにできた選手はまだ見当たらない。
 ぼくの目からすれば(これは情の論理などではなく)、この道はシウバらが追求しているレベルよりも数段高く、それゆえに試合を通して身につけ、発揮していくのはかなり難しいものでもある。

 でもそれを求める気持ちがあるというなら仕方がない。少なくともブラジル人の真似をしてハングリーを追求しているうちは彼らの天下が続く。
 近藤がこの道を会得できるかはわからないが、何年か先にはそんな“化け物”が格闘界にも現れるかもしれない。

 野球でいうイチローがそんな存在だといえば、多少はイメージできるだろうか? あそこまで到達してしまうとシウバの剛の強さも呑み込まれてしまうと思う。ということは、アクシデントがない限り、シウバの独り勝ちは当分続くのかもしれない。


投稿者 長沼敬憲 : 2004年08月17日 17:42

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