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2005年05月09日

PRIDEミドル級トーナメントと「金原弘光」の場合

 PRIDEミドル級のトーナメントが始まった。見ての感想はいろいろあるが……、すでに発売された雑誌などを見るかぎり、それほど大きく視点が異なっているわけでもない。

 ただ今回ふと感じたのは、フレーズ自体はありきたりだが、「リングの上だけが戦いではないんだな」ということ。
 そう感じたのは、大会が終わって数日後、トーナメント出場の機会を逃した金原弘光のブログに、たまたま目を通していた時のことだ。

 彼の実力がミドル級では日本でも指折りあることは、筆者もよく知っている。しかし、PRIDEのリングに上がるようになって以降、どうしても勝てない。PRIDEのオフィシャルサイトの戦績をなんとなく眺めていたら、あることに気がついた。

 ヴァンダレイ・シウバ、ミルコ・クロコップ、アリスター・オーフレイム、マウリシオ・ショーグン

 対戦相手のすべてが相当の実力者であることはもちろん、シウバ、オーフレイム、ショーグンは、先のミドル級トーナメントの1回戦も見事突破している。ミルコも含め、事実上、彼らの踏み台になってしまったような格好だ。

 また、試合間隔で言えば、

 シウバ(2002年11月)→ミルコ(04年5月)→アリスター(同年10月)→ショーグン(05年2月)

 ミルコ戦以降、4〜5か月という決してコンスタントとは言えない間隔で、言ってみればポツンポツンと、強豪との試合が組まれている。
 これでは戦いが線としてつながっていかず、ただ一つ一つの敗戦の記録だけが重なっていくかのような印象を受ける。ハッキリ言ってもったいない。

 筆者が思ったのは、おそらくPRIDEとの交渉も彼自身が直接関与しているのではないかということ。
 であるなら、ファイターの性分としては、基本的には「この人とは戦いたくない」とは言いにくい面があるだろう。だから半分強がりでも、チャンスだと思ったら無謀なカードを引き受けてしまう。
 筆者から見れば、すでにこの時点で相手に有利なポジションを奪われたようなものだ。不利な状態でリングに上がってしまっているのである。

 これに対し、賛否両論はあるが、グレイシー一族がなぜあれだけ事前の交渉にこだわるのか? シウバやノゲイラ、ミルコらがなぜチーム単位で交渉を行っているのか?
 練習に集中したいからというだけではあるまい。チーム単位で自分に有利な状況を作りだし、負けるリスクをより少なくした上でリングに上がりたいという意図があるからだ。

 「真剣勝負のリングでは実力のあるものが勝つ」……というのは、正論と言えば正論だが、その実力には技術的なもの、精神的なもの以外にも様々な要素が含まれている。
 総合格闘技というのは、その「様々な要素」が総合された状況の中で戦うということを、本質的には意味しているのだと筆者は思う。

 元リングス勢は、正直言えば前田日明の卓越したプロデュース能力によって支えられていた(うまく能力が引き出されていた)面がやはりある。
 このプロデュースを、独立して、すべて1人でやる(そして結果を出す)というのは難しい。
 金原が実力者でありながら勝ち星に恵まれないのも、おそらくこの点にあるのではないか?

 たとえば去年10月のアリスター戦に勝てていれば、次戦の展開も変わり、ミドル級トーナメントにも出場できていた可能性はある。
 それが叶わなかったのは、アリスターに負けたからというより、その対戦を引き受ける過程での戦略の問題もあったはずだ。有利なシチュエーションがつくれたら、結果が変わっていた可能性もあるのだから。

 そう言えば、ケガもあり、同じようにトーナメントに出場しなかった1人に、同じリングスでしのぎを削った田村潔司もいる。
 田村もリングスを離れ、PRIDEに出場した初戦で、金原と同様、いきなり強豪シウバとのタイトルマッチ。ルールも異なる大会の初戦で、よくもまあこんなカードを引き受けたものだと、筆者自身、驚いた記憶がある。

 ちなみに田村は、このシウバ戦後、ブレイクする前のボブ・サップともPRIDEで戦っている(体格差が災いして秒殺KO負け)。このへんは以前にも「観戦記」のページで指摘したことだが、田村はこうした“無謀な敗戦”を通じて、自己プロデュースの難しさというものを肌身で感じたのではないだろうか?

 田村の場合、リングス時代から自分でジムを立ち上げ、弟子を育て、離脱後はUWFルールを踏襲した大会を定期的に開くまでになっている。
 今回のトーナメントはケガという不可抗力もあったようだが、最近の動向を見るかぎり、リング外での戦い=自己プロデュースについても、リングでの戦い並みに重要視し、あれこれ試行錯誤している様子が見受けられる。

 PRIDEで勝てない金原も、いま最も考えなければならないのは、この点だと筆者は思う。タイにキックの修行に行くよりは、自分のことをよく理解し、うまくプロモートしてくれるブレーンとの出会いに意識を向けることのほうが重要だ。あるいは、田村同様、自分自身で意識してこの能力を身につけていくか……。
 選手層が充実し、実力が均衡してくると、おそらくこんなところで差が出てくる。

 今回のトーナメントの8人の勝者は、この点でもかなり実力が均衡している(つまりは勝つべくして勝った)ように思われるが、どうだろう? あえて異分子を挙げるのなら、一匹狼に近いボブチャンチン。捨て身で殴り込んできている気配があり、台風の目になる可能性は十分にある。

投稿者 長沼敬憲 : 2005年05月09日 10:40

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