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2005年09月10日
9.7「HERO'Sミドル級GP」を見た。
前大会に引き続き、はるばる有明コロシアムに総合格闘技「HERO'S 2005ミドル級世界最強王者決定トーナメント」を見にいってきた。
ことし旗揚げしたばかりとは思えない、かなり洗練された雰囲気の大会。
後発ながら同じ階級のライバル・イベント「PRIDE武士道」をスッと追い抜き、なにやらあっという間に人気ソフトになってしまった感じ。
看板選手である山本KIDや須藤元気が、すでに立ち技のK-1MAXでブレイクしていたという下地がやはり大きい。
以下に、試合を観戦して気づいた点などをざっくりつづってみたい。
準々決勝
○須藤元気(2R 4分45秒 腕ひしぎ十字固め )宮田和幸●
試合は5分2ラウンド(+1ラウンド延長あり)。PRIDEでの試合形式(1R10分・2〜3R5分)を見慣れていたせいか、1R終わった時点での感想は「早っ」。笑。
時間が短い分、1ミスが敗戦につながってしまう。選手は大変だろうなと思ったが……。
須藤が勝利したのは、にもかかわらず、落ち着いて試合をしていた点だろう。1R押され気味だったのに、自分のペースを崩さなかった。
そう言えば、いま柔道の世界選手権が、連日テレビで中継されているが、こちらは試合時間がたった5分。でも、残り時間1分、2分というところでも結構逆転がある。
時間というのはある意味相対的なもので、長さは個人の感じ方によって左右される。落ち着いている人は、「5分は短い」というような一般の固定観念にとらわれない感覚を持っていると言えるかもしれない。
須藤がクール(頭がいい)と言われるのは、たくさん本を読んでいて、理論家であるからではない。トリックスターと呼ばれるのも、変わり者だからではない。それは彼の頭が柔らかく、固定観念に囚われない感性があるから。
感性なんていう言葉は、ある意味使い古された表現だが、「時間に支配されない=落ち着いている」というキーワードからひもとくと、ひとつ実態が見えてくるかもしれない。
●レミギウス・モリカビュチス(2R 4分16秒 TKO *レフェリーストップ) 高谷 裕之○
戦前の予想では、レミギウス有利の声が多かったのではないか? 二人とも打撃系。「レミギウスのパンチ力のほうが上=だから有利」という図式が見る側にあったかもしれないが、勝負を分けたのは、「腰の強さ」の差だった。
高谷は打撃のことや、過去にストリートファイトで慣した武勇伝みたいなものがクローズアップされているが、ぼくが驚いたのはそこにつきる。
打撃中心の選手は、往々にして組み技系よりも線が細い面がある。だから、打撃をスカされ倒されると、ひっくり返せない。レミギウスもそんな感じだった。
でも、彼がそうだったことより、高谷がそうでなかった(=思いのほか腰が強かった)ことに「頼もしさ」を覚えた。
日本人vs外国人の構図だと逆のパターンが多かった気がするが、ことこのクラスに関しては、やはり日本も相応に層が厚いように思われる。
●ホイラー・グレイシー(2R 0分38秒 KO *右フック) 山本“KID”徳郁○
やや全盛期を過ぎた感のあるホイラーだが、それでもあれだけ鮮烈なKO勝ちのできるKIDは、やはり並ではないという印象。
○宇野薫(2R判定 3-0)所英男●
この日のベストバウトと呼ばれた試合だが、ここでも勝敗を分けたのは「腰の強さ」の差だったように思う。
所は非常にセンスのある選手だが、やや安易に下になりすぎる。試合時間が短い以上、もう少し腰を強くして崩れないようにしないと、接戦の場合、今回のような結果になる。そこが課題になってくるのではないだろうか。
この点ではやはり次の高谷の試合のほうが、ぼくには興味深く思えた。
準決勝
○須藤元気(2R 3分47秒 三角締め)高谷裕之●
結果的に須藤の流れるような関節技が決まったが、テークダウンされても安易に下にならない高谷の「腰の強さ」がここでも目立った。
タイミングを合わされタックルで倒されても、わずかな間にスッと上体を起こして、不利な態勢をつくらない。こういう光景を見ると「胸がすく」。格闘技を見ていて面白いと思える瞬間だ。
ぼく的にはこの試合がベストバウト。
○山本“KID”徳郁 (2R 4分04秒 TKO *レフェリーストップ) 宇野薫●
不利な立ち技でKIDに対抗した宇野。ホイラー戦の時とよく似た比較的動きの少ない展開だったが、キッドの打撃で宇野が額?をカット。
あくまで自分の得意な土俵に持ち込もうとする須藤やKIDが勝ち、それをしなかった宇野が負けたという構図。
実力差というより、勝負に対するスタンスが明暗を分けたような気がする。
大会終了後、スーパーバイザーの前田日明が、須藤の「相手の攻撃をスカす」戦術に苦言を呈していたが、その前田が宇野を高評価していたのは、彼のこうした“戦う姿勢”にあったのだと思う。
とはいえ、「負けたら始まらない」という意識の強かった須藤やKIDが勝ち上がり、「いい試合をしたい」という意識をどこかに持っていた宇野や所が敗れたのは、格闘技的には、ある意味順当な結果と言えるかもしれない。
もちろん、試合は互いの技術や精神力の「試し合い」という考えを持っている前田からすれば、こうした「割り切ったほうが勝ち」というような状況から一歩踏み出したものを、この先の展開に望んでいるように思われる。
その意図にピンと来る選手がどれだけいるかが問題だが、仮に前田の感覚がうまく伝わっていけば、格闘技も質的な意味でより「武道」に近いものに変わっていくだろう。
これは「HERO'S」が先発の「PRIDE」にはないカラーを打ち出していく上でも、じつはかなり重要なテーマになってくるかもしれない。
そして同時に、おそらく前田が、「ビッグマウス・ラウド」でやろうとしている“新しいプロレス”のイメージも、ここにリンクしていることのように感じられる。
以上が、感想でした。
投稿者 長沼敬憲 : 2005年09月10日 12:12